ぎっくり腰を頻発するとヘルニアになる理由

ぎっくり腰を頻発するとヘルニアになる理由

ぎっくり腰から椎間板ヘルニアへの進行を防ぐ:2つの症例から学ぶ予防の重要性

ねもと整体&ストレッチスタジオ院長根本大

ねもと整体&ストレッチスタジオ院長根本大

川崎市登戸・向ヶ丘遊園の「ねもと整体&ストレッチスタジオ」院長 根本大。20年の臨床経験を持つ関節ニュートラル整体の施術者。健康運動指導士・米国ストレングス&コンディショニングスペシャリスト。整体技術と運動指導の両面からのサポートしており、長年の経験をお伝えしています。

ぎっくり腰を繰り返す人は腰の靭帯が伸びている

ぎっくり腰を繰り返す男性と腰の靭帯が伸びた腰椎の解剖図を並べて描いたイラスト。左側には痛みで腰を押さえて前かがみになる男性が描かれ、右側には人体断面図として腰椎と骨盤、靭帯の伸張が示されている。背景はシンプルなベージュ色。

ぎっくり腰を繰り返している方は、いつの間にかその症状に慣れてしまいます。年に1回程度の急性腰痛症から始まり、数ヶ月に1回の頻度になっても「風邪のようなもの」として軽視し、時間の経過とともに自然治癒すると思い込んでいる方が少なくありません。

しかし、何度も繰り返すことで腰の靭帯が伸びてしまい、いつしか椎間板ヘルニアのような重症の腰痛で苦しむ方も多いのが現実です。

急性腰痛から椎間板ヘルニアへ:2つの症例

若い頃にサッカーをしていた男性が、現在は運送業として働きながら腰痛に苦しんでいる様子を描いたイラスト。左側にはサッカーをしている元気な青年、右側には荷物を持ち上げる姿勢で腰に痛みを感じている男性、さらに右端には椎間板ヘルニアの医学的な断面図が描かれている。背景はシンプルなベージュ色。

サッカー経験者から運送業者で腰痛から椎間板ヘルニアに

最近経験した2つの事例をご紹介します。1人目は30代で運送業を営む男性です。仕事柄、腰への負担が非常に強い業務に従事しており、バリバリ働く現役世代です。もともとサッカーをやっていた運動歴はあるものの、体が硬いのが特徴でした。私の長年の臨床経験では、サッカーなど少年時代からスポーツをしている方でも、下半身の筋肉の柔軟性を調べると一般の方よりも硬い場合がほとんどです。

ある休日、サッカーでダッシュをしようとした際にぎっくり腰を発症し来院されました。整体施術により症状は軽減し、1週間ほどで改善するパターンだったと思われました。しかし、3ヶ月後に再び同じような急性腰痛症状で来院された際、施術への反応が著しく悪くなっていました。

医療機関でのMRI検査を受けていただくと、既に椎間板ヘルニアの状態になっており、下肢放散痛(坐骨神経痛)を伴い、仕事も休むほどの重症に進行していました。当院での集中的なケアと医療機関との連携により約3ヶ月でほぼ改善しましたが、仕事を休んだり整体や医療費を含めると、単純なぎっくり腰と比べて椎間板ヘルニアは経済的負担も大きくなりました。

介護職 急性腰痛から腰椎椎間板ヘルニアになるケース

腰を押さえて前かがみになり痛みを訴える介護職の女性、椅子に座る高齢女性、右側には椎間板ヘルニアを示す腰椎の断面図が描かれたイラスト。背景はベージュで統一され、職業的負荷による腰痛と神経症状の進行を表現している。

もうおひとりの方は介護のお仕事を長年従事。周りにも腰痛・腰椎椎間板ヘルニアの人が多く、ぎっくり腰にも慣れてしまっていました。

来院時に既に下肢のしびれがあり、椎間板ヘルニアの病態を呈していました。以前からやはりぎっくり腰を繰り返していましたが、慣れてしまい、さらに頻度が増えて最後には足の痺れでヘルニアになったようです。

1人目と異なるのは、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返し、慢性的にくすぶっている状態が続いていたことです。集中的なケアプログラムとして週2回×7回の施術を実施し、疼痛が約半減したため、同じペースでさらに7回継続していただきました。徐々に痛みが改善し、現在では数ヶ月に1回のメンテナンスケアで症状をコントロールできる状態まで回復しました。

予防的アプローチとしての筋力低下を防ぐ

不良姿勢の男性、短縮した筋肉の図、そして椎間板ヘルニアの断面図が並んで描かれた医学的イラスト。左には腰を丸めた前かがみ姿勢の人物、中央にはハムストリングスや腸腰筋などの筋肉が短縮している様子、右には腰椎の椎間板ヘルニアの断面図が描かれている。背景はベージュで統一。

この2人の方に共通するぎっくり腰から椎間板ヘルニアへの進行要因として、まず著しい姿勢異常が挙げられます。不良姿勢による腰椎前弯の減少や後弯の増強は、椎間板内圧を上昇させ、椎間板変性を促進します。

そして、その姿勢を崩している原因は、下半身の筋肉の柔軟性低下と運動不足による全身の筋力低下が関与していると考えられます。特にハムストリングス、腸腰筋、大腿四頭筋の短縮は腰椎-骨盤リズムを障害し、腰椎への機械的ストレスを増加させます。

また、体幹深層筋(コアマッスル)の筋力低下は腰椎の動的安定性を損ない、椎間板への負荷を増大させる要因となります。

整体による予防ケアの価値

前かがみで腰を押さえる男性、施術を受ける男性とそれをサポートする整体師、椎間板ヘルニアの腰椎断面図、予防を象徴する盾のマークが並んだイラスト。背景はベージュで統一され、予防的ケアの重要性を視覚的に表現している。

ぎっくり腰の段階で「いつこのように悪化してしまうかもしれない」という意識を持って症状を管理していくことが、我々整体師の仕事では極めて重要だと感じたケースです。予防的な整体ケアを継続的に受けていただくことで、重篤な腰椎疾患への進行を防ぐことが可能です。経済的な損失や将来の健康寿命などの費用対効果を考慮すると、予防的な整体ケアにまさるものはないと確信しております。

当院では、定期的な整体施術による身体のメンテナンスをお勧めしています。症状が出てからではなく、症状が出る前の予防的なケアこそが最も重要だと考えています。ただし、症状が重篤な場合や神経症状を伴う場合には、適切な検査が必要となりますので、医療機関との連携体制を整えており、必要に応じて速やかにご紹介させていただいております。

反復性の急性腰痛は椎間板ヘルニアへの前駆症状

女性が腰を抑えながらストレッチを行っている横で、男性患者がベッドに横たわり整体師が脚を持ち上げて施術を行っているイラスト。背景には椎間板ヘルニアの解剖図や予防を示す盾マーク、観葉植物とソファが描かれ、自宅と施術の両立による予防ケアの重要性を表している。

お二人とも整体での専門的なケアと併行して、自宅で推奨するセルフケアを1日5分程度実践していただいており、これが痛みの再発予防に大きく寄与していると考えられます。セルフケアプログラムには下肢筋群のストレッチング、体幹安定化エクササイズ、姿勢矯正訓練、日常生活動作指導などが含まれます。

反復性の急性腰痛は椎間板ヘルニアへの前駆症状として捉える必要があります。早期の適切な整体ケアと継続的な予防的アプローチにより、重篤な腰椎疾患への進行を防ぎ、皆様の健康寿命の延伸とQOL向上に貢献できるよう努めております。

ぎっくり腰の危険信号:見逃してはいけない症状の変化

腰を押さえて前かがみになる男性、片膝をついて足の痛みを訴える女性、立ったまま太ももを押さえる女性の3人が描かれたイラスト。背景はベージュで統一され、骨やマークなどはなく、痛みを示す線のみが加えられている。

ぎっくり腰を過去に経験された方で、椎間板ヘルニアなどの重篤な状態に進行する方には明確な共通点があります。最も重要な指標はぎっくり腰の発症頻度です。1年以内に数回ぎっくり腰を起こしてしまう方は、既にぎっくり腰が癖になっている状態で、要注意レベルに達していると判断できます。

このような頻発性の急性腰痛は、腰部の靭帯や椎間板の構造的な劣化が進行している証拠であり、単なる偶然ではありません。専門的な視点から言えば、反復性急性腰痛症は椎間板ヘルニアへの前駆症状として捉える必要があります。

筋肉痛とぎっくり腰の鑑別診断
多くの方が混同されるのが、筋肉痛とぎっくり腰の違いです。草むしりなどの日常作業後に腰が痛くなった場合、「筋肉痛だろう」と軽視される傾向がありますが、実際にはぎっくり腰の可能性が高いのが現実です。
通常、日常作業で筋肉痛が発生するのは大腿部や下腿部などの大きな筋群であり、腰部の限局的な一箇所のみに痛みが生じることは筋肉痛では稀です。腰部の特定部位に集中的な疼痛が現れる場合は、筋肉痛ではなく急性腰痛症(ぎっくり腰)を疑う必要があります。

医療機関受診の適切なタイミング

左側にぎっくり腰で腰を押さえる男性、中央に椎間板ヘルニアの断面図と神経への圧迫を示すイラスト、右上にはMRI検査中の人物、右下には足のしびれに苦しむ女性が座っている様子が描かれたイラスト。背景はベージュで、神経症状や早期検査の重要性を視覚的に表現している。

急性期のぎっくり腰に対する医療機関受診のタイミングは、症状の重篤度と社会的要因を総合的に判断する必要があります。就労中の方は痛み止めで症状を抑制しながら業務を継続せざるを得ないケースもありますが、これは根本的な解決にはなりません。
整形外科では、ぎっくり腰に対してレントゲン検査で骨に異常がないことを確認し、湿布処方で終了するケースが多いのが実情です。しかし、私の臨床経験では、疼痛が強度な患者様に対しては座薬の処方まで必要となるケースや、歩行困難でトイレにも行けない状態となり入院が必要となる症例も経験しています。
このように、一見軽微に見えるぎっくり腰も、いつの間にか椎間板ヘルニアに変化している可能性があるため、症状を軽視することは危険です。

神経症状の出現と症状の質的変化
足のしびれや感覚異常が出現した場合は、単純なぎっくり腰から腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症への病態変化を疑う必要があります。これらの神経症状は、神経根の圧迫や刺激により生じるもので、筋骨格系の問題を超えた神経学的な病変の存在を示唆しています。
また、痛みの質的変化も見逃してはいけない重要な指標です。ぎっくり腰の特徴的な鋭い痛みから、徐々に持続的な下肢のしびれや臀部から足にかけての放散痛に変化した場合は、もはやぎっくり腰ではなく、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の可能性を強く疑う必要があります。


専門的評価の重要性
これらの症状変化を念頭に置き、ぎっくり腰を単純に軽視することなく、適切なタイミングで医療機関を受診することが重要です。特に反復性の急性腰痛や神経症状を伴う場合は、MRI検査などの精密検査による正確な診断が必要となります。早期の適切な評価と治療により、重篤な腰椎疾患への進行を防ぐことが可能となるのです。

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