子どもの運動能力は年齢だけで決まるものではありません。多様な動きを経験する機会を大切にしたいと考えています。子どもの運動発達を考える際には「ゴールデンエイジ」という言葉も使われますが、年齢区分や学びやすさについては議論があります。足が遅い、運動が苦手そうだと感じていても、お子さんのペースに合わせて、動きの土台づくりに取り組むことができます。
大切なのは一つの競技を極めることではなく、走る、跳ぶ、かわすといった体の使い方の引き出しを増やすことです。この記事では、球技や対人競技をすすめる理由と、サッカーをするお子さんへの指導例、海外の研究が示す内容を、ねもと整体&ストレッチスタジオ(川崎市登戸)での指導経験をもとにお伝えします。
子どもの運動経験とゴールデンエイジの考え方

お子さんの運動神経について、いつ頃から何をさせればよいのか迷われている保護者の方は多いと思います。スポーツの世界では、子どもの運動発達を説明する際に「ゴールデンエイジ」という言葉が使われます。5歳から10歳ごろなどの年齢が目安として挙げられることもありますが、区分は一定ではなく、特定の年齢だけが運動を学びやすいと断定することはできません。
自転車に久しぶりに乗るときのように、経験した動きが身についていると感じることがあります。走る、跳ぶ、投げる、かわす、止まるといった動きを子どもの頃に経験することは、スポーツだけでなく、日常生活で体を動かす練習にもなります。
私が大切にしているのは、動きを完璧に仕上げることではありません。多少荒削りでも構いません。前後、左右、斜め、回転と、動きの方向や角度のパターンを増やすことを、運動の土台づくりの一つと考えています。
海外の研究が示すゴールデンエイジの考え方

ここで、ゴールデンエイジという考え方を海外の研究とあわせて見ておきます。実はこの言葉には、研究者の間でも議論があります。10歳の子ども、若い成人、大人に、初めて経験する運動課題を学んでもらい、同じスタートラインから比べた研究では、10歳児が特別に運動を学ぶのが速いという証拠は見つからなかったと報告されています。
それまでの研究で見られた差は、練習量などの条件がそろっていなかったことによる見かけの差だった可能性がある、というのが研究者の見方です。
これは、ゴールデンエイジが無意味だという話ではありません。子どもは大人よりも、遊びやスポーツの中で動きを練習する時間がはるかに長いと指摘されています。年齢そのものが魔法のように効くというより、多くの動きを経験する機会が豊富な時期だということです。だからこそ、その時間をどう使うかが大切になります。
さらに、複数の競技を経験することについても研究が進んでいます。若い選手を対象にした系統的レビューとメタ分析では、早くから一つの競技に絞った子どもの方が、複数の競技を経験した子どもよりもケガのリスクが高いと報告されています。
全米アスレティックトレーナーズ協会も、一つの競技への専念はできるだけ遅らせて、さまざまなスポーツを経験することを勧めています。
10歳を過ぎたお子さんはもう遅いのか?

「うちの子はもう10歳を過ぎているから遅いのでは」と心配される保護者の方もいらっしゃいます。ただ、先ほどの研究では、10歳児が特別に速く運動を学べるという証拠は見つからなかったと報告されています。
年齢の枠にこだわりすぎるよりも、お子さんがいろいろな動きを経験できる環境を整えることの方が、ずっと大切だと私は考えています。
もちろん、5歳から10歳の間にたくさんの動きを経験できれば理想的です。けれど、足が遅い、動きがぎこちないと感じた時点で、体の使い方を見直しはじめる意味は十分にあります。
水泳よりも球技や対人競技をすすめる理由

日本では、お子さんの習い事として水泳を選ぶご家庭が多いと思います。水泳が悪いという話ではありません。ただ、この時期の運動能力を伸ばすことを目的に選ぶなら、私は球技や、柔道、空手といった対人競技の方をおすすめしています。
理由は、予測できない刺激に対して、その場で体を使って対応する経験が得られるからです。ボールはどこにどんな速さで来るか分かりません。
対人競技では、相手がどう動くかによって、自分の動きも毎回変わります。この「ランダムな状況に合わせて体を動かす」経験が、子どもの時期に伸ばせる運動能力の中で、いちばん大切な要素だと感じています。決まった動きを繰り返す種目とは、体と頭の使い方が違ってくるのです。
足が遅かった小学4年生のサッカー少年のケース

ここでは、ねもと整体&ストレッチスタジオでパーソナルトレーニングを行った、小学4年生当時のサッカーをするお子さんへの指導内容を紹介します。個別の指導例であり、同じ期間や方法での上達、競技成績、ケガの予防を保証するものではありません。
お父さんと一緒に来店され、「チームの中で足が遅く、どうしたら速く走れるようになるか知りたい」と相談を受けました。体の使い方を確認し、股関節を動かす練習を取り入れました。柔軟性や関節の動かしやすさには個人差があり、競技だけで一律には判断できません。
走り方には、股関節の動かし方だけでなく、筋力、タイミング、成長、練習経験など複数の要素が関わります。この例では、一歩の大きさや足の運びを確認しながら、動的ストレッチを取り入れ、週1回30分のパーソナルトレーニングを約3か月続けました。
また、過去にジャンプの着地で足首を捻挫した経験があったため、状態に配慮しながら足首を動かす練習と、アジリティーディスクを使ったバランストレーニングも加えました。
走りや動きの変化には、成長やチーム練習なども関わります。この例はそれぞれの影響を分けて検証したものではなく、指導だけによる成果やケガの予防効果は判断できません。取り組み方の一例として参考にしてください。
動的ストレッチとは?取り入れる際の考え方

動的ストレッチとは、体を動かしながら関節を無理のない範囲で動かすストレッチです。じっと伸ばし続ける静的ストレッチとは違い、走る、跳ぶといった動きに近い形を取り入れるのが特徴です。
股関節や足首を動かす練習は、自分の動かしやすい範囲や足の運びを確かめる機会になります。動かせる範囲や変化には個人差があり、可動域を広げれば必ず走力やバランス能力が向上するとは限りません。
先ほどの指導例でも、動的ストレッチとバランストレーニングを組み合わせましたが、それによるケガの予防効果は確認できません。痛みを我慢したり、反動をつけて無理に動かしたりせず、お子さんの体調や経験に合わせて行ってください。痛みや腫れ、けががある場合は運動を中止し、医療機関に相談してください。
チームの練習だけでは身につきにくい体の使い方

サッカーや野球のようなチームスポーツでも、走り方やジャンプの仕方、腕の振り方、足の上げ方、手足の連動といった基本的な体の操作を、一人ひとりに指導している例は、私の見る限りほとんどありません。多くは団体練習の中でドリルを行う形です。
それは、チームのウォーミングアップを見ているとよく分かります。サッカーをしているお子さんは、ボールに触れることがウォーミングアップだと考えていることが多いです。ボールを触りたい気持ちはもちろん大切です。ただ、私の考えは少し違います。この時期は、競技の練習そのもの以上に、体を巧みに動かせるようになる運動プログラムを多く取り入れる方がよいと感じています。
競技の技術は、体を思い通りに動かせる土台があってこそ伸びていきます。足が遅い、運動が苦手そうだと感じるお子さんも、動きの土台は今からでも育てられます。
まずはウォーミングアップや普段の遊びの中に、いろいろな方向への動きを取り入れるところから始めてみてください。
よくある質問
Q1.水泳は習わせない方がいいのでしょうか?

A.そんなことはありません。水泳が悪いわけではなく、あくまで運動能力を伸ばすという目的で比べたときに、私は球技や対人競技をすすめているという話です。予測できないボールや相手の動きに、その場で体を使って対応する経験は、決まった動きを繰り返す種目では得にくいものです。水泳を続けながら、球技や武道を一つ加えるという形でも、動きの幅は十分に広がります。
Q2.足が遅いお子さんに、家庭でできることはありますか?

A.まずは、いろいろな方向への動きを遊びの中に取り入れてみてください。前後、左右、斜め、回転と、動きの方向や角度の種類を増やすことが、この時期の土台づくりになります。完璧なフォームを目指す必要はなく、多少荒削りでも構いません。ウォーミングアップに動きながら関節を大きく動かす動的ストレッチを入れるのもおすすめです。
Q3.一つの競技に絞らず、いくつかの競技を経験させた方がいいのでしょうか?

A.海外の研究では、早くから一つの競技に絞った子どもの方が、複数の競技を経験した子どもよりもケガのリスクが高いと報告されています。全米アスレティックトレーナーズ協会も、一つの競技への専念はできるだけ遅らせることを勧めています。ただし、お子さん本人が夢中になれることが何より大切です。好きな競技を続けながら、普段の遊びやウォーミングアップで別の動きも経験させてあげてください。
当院のジュニアアスリートパーソナルトレーニング

当院では、ジュニアアスリートを対象に30分および60分のパーソナルトレーニングを行っています。走り方や関節の動かし方、バランスなど、お子さんの年齢・経験・体調に合わせた運動の練習を支援します。
下の表は、スポーツで使われる体力要素を説明したものです。特定の期間での能力向上、将来の競技成績、ケガの予防を保証するものではありません。当院の運動指導は、医師による診断や治療に代わるものではありません。
| 体力要素 | わかりやすい意味(イメージ) | スポーツでのメリット・役割 |
|---|---|---|
| 敏捷性(アジリティ) すばしっこさ | 体を素早く切り返し、方向転換する能力 | フェイントで相手を抜いたり、相手の動きに素早くついていくことができます。 |
| 瞬発力(パワー) 一瞬の爆発力 | 短い時間で大きな力を一気に出す能力 | 高くジャンプする、スタートダッシュを決めるなど、決定的な場面での力強さを生み出します。 |
| バランス能力 姿勢を保つ力・体幹 | 不安定な状態でも体の軸を崩さない能力 | 接触や着地などの場面で姿勢を保つために使われます。ケガを防げることを保証するものではありません。 |
| 巧緻性(コーディネーション) 運動センス・器用さ | 頭でイメージした通りに、自分の体を正確に動かす能力 | 道具を上手に扱うだけでなく、新しい動きや技術を学ぶ場面でも使われます。 |
【まとめ】

ここまで、お子さんの運動神経を伸ばす時期と、動きの土台の育て方についてお伝えしてきました。ゴールデンエイジという考え方には海外で異論もありますが、子どもの頃に走る・跳ぶ・投げるなどを楽しむことは、運動経験を広げる機会になります。研究で報告された関連と、当院の個別の指導経験は区別して考える必要があります。
- ・5歳から10歳ごろは、走る、跳ぶ、かわす、止まるなど、いろいろな動きのパターンを増やしたい時期です。完璧さよりも、動きの方向や角度の種類を増やすことを大切にしてください。
- ・水泳だけでなく、予測できないボールや相手に反応する球技や対人競技を経験すると、運動能力の幅が広がると私は感じています。海外の研究でも、早期に一つの競技へ特化することとケガのリスクとの関連が報告されています。ただし、複数競技の経験でケガを防げると断定することはできません。
- ・チームの練習だけでは、走り方や股関節の使い方まで教わる機会は多くありません。本記事の小学4年生への指導例では、動的ストレッチやバランス練習を取り入れました。約3か月という期間や指導方法は、同様の成果を保証するものではありません。
- ・ゴールデンエイジを過ぎたからといって、遅すぎるわけではありません。気づいた今が、体の使い方を見直すいちばん早いタイミングです。
ねもと整体&ストレッチスタジオでは、ジュニアアスリートのパーソナルトレーニングも行っています。走り方や股関節の使い方、動的ストレッチ、バランストレーニングなど、お子さんの体の使い方に合わせて、一人ひとりに指導しています。足の速さや動きに悩むお子さんの体づくりを、私たちがお手伝いします。
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