子供の野球肘|原因は体重移動にあった

子供の野球肘|原因は体重移動にあった

最終更新日8月14日

子供の野球肘でお悩みの方へ

グラウンドで真剣にボールを追いかける我が子の姿は、親にとって何よりも誇らしいものです。だからこそ、練習から帰ってきたお子さんがそっと肘をさすっていたり、「投げた後だけちょっと痛い」とつぶやいたりする瞬間に、胸がぎゅっと締めつけられるような不安を感じたことはないでしょうか。「病院では様子を見ましょうと言われたけれど、本当にこのままでいいのだろうか」「このまま投げ続けさせて、取り返しのつかないことにならないだろうか」。そんな声を、当院では日々たくさんいただいています。

野球肘は、単純に投げすぎが原因だと思われがちです。しかし実際には、下半身の使い方、とりわけ体重移動のクセが、肘への負担に大きく関わっていることが少なくありません。原因を正しく理解しないまま投球数だけを制限しても、根本的な解決にはつながらないのです。

この記事では、野球肘が起こる本当の仕組みと、ご家庭でも今日から意識できる体の使い方のヒントを、20年以上にわたりジュニアアスリートのお子さんたちと向き合ってきた立場から、できる限りわかりやすくお伝えしていきます。大好きな野球を、痛みを我慢することなく、これからも思い切り楽しんでもらうために、ぜひ最後まで読んでみてください。

野球肘はどこがどう痛くなるのか?

肘に手を当てている男性

野球肘は、投球動作の繰り返しによって肘の内側(小指側)に痛みが出るのが特徴です。クラブを振り下ろす動作で内側に負担がかかるゴルフ肘と構造的には同じグループに分類され、手首を掌側に曲げる筋肉(屈筋群)に繰り返し負担がかかる点が共通しています。

ちなみにテニス肘は逆で、肘の外側(親指側)に痛みが出ます。バックハンドのように手首を甲側に反らす動作の繰り返しで、前腕の伸筋群が引っ張られて炎症を起こすためです。

外側か内側かの違いはありますが、どちらも前腕の使いすぎが根本原因という点は共通しています。

野球肘の負担を減らす鍵は体重移動にある

投球動作をしている男性

投球動作において、腕はあくまでも体が生み出した力をボールに伝える最後の役割を担っているにすぎません。力の起点となっているのは下半身の体重移動、つまり右足から左足へ体重を乗せ替える動きです。

この体重移動がスムーズに行えていないと、本来下半身で受け止めるはずの負荷が、肘に集中してしまいます。下半身から生み出された力がうまく骨盤や体幹を通じて伝わらないと、肘にかかる捻る方向の負荷が大きくなることが、投球動作を分析した研究でも示されています。

下半身の連動がわずかに崩れるだけで、肘や肩が本来受けなくてよいはずの負担を肩代わりしてしまうのです。

体重移動と日常動作・野球の構造の関係

投球をしている男性

体重移動が肘の負担を減らす大きな要因になる中で、特に見極めが必要なのが下半身の左右の荷重バランスです。左足への荷重と右足への荷重が、バランスよく乗せられているかどうかということです。

実は私たちの生活や野球というスポーツの構造そのものが、左側への荷重に偏りやすくできています。駅の改札機は、切符やICカードを入れる動作が右手中心になるため右側に設置されているのがほとんどで、左側に設置された改札機はまず見かけません。

野球のベースランニングも同様に左回りの動きで、逆から回るダイヤモンドというのは存在しません。

つまり野球というスポーツ自体が、左側に荷重するような構造の中で行われているのです。この構造を理解すると、日頃から左側にばかり体重が乗る動きを繰り返している子供に対して、意識的に右側への荷重を鍛えるエクササイズを行うことが、肘への負担を減らすための重要なポイントになることが見えてきます。

右足荷重を鍛えるとピッチングも変わる理由

右側への荷重が身につくとどう変わるか?

投球をしている男性

子供の頃からこの体重移動の動作を意識して行うことで、これまで十分にできていなかった右側への荷重動作がしっかりと行えるようになります。その結果として、球速が上がったり、ハンドスピードが自然と速くなったりすることも理解できます。下半身から生み出された力を効率よく上半身、そして腕へと伝えられるようになるほど、少ない力で大きな出力が生み出せるようになるためです。

これは、腕の筋力だけに頼ってボールを投げている状態から、体全体を連動させて投げる状態へと変化していくことを意味します。多くの子供は、投げる力が足りないと感じたとき、腕や肩の力でなんとか補おうとしてしまいます。

しかし腕や肩は、もともと大きな力を生み出すための部位ではなく、下半身や体幹で生み出された力を、最後に受け取って加速させる役割を担っています。ここに無理に力を込めようとすると、フォームが崩れやすくなるだけでなく、肘や肩への負担もさらに大きくなってしまいます。

体重移動と運動連鎖の関係

ピッチングをしている男性

子供の頃からこの体重移動の動作を意識して行うことで、これまで十分にできていなかった右側への荷重動作がしっかりと行えるようになります。その結果として、球速が上がったり、ハンドスピードが自然と速くなったりすることも理解できます。

下半身から生み出された力を効率よく上半身、そして腕へと伝えられるようになるほど、少ない力で大きな出力が生み出せるようになるためです。これは、腕の筋力だけに頼ってボールを投げている状態から、体全体を連動させて投げる状態へと変化していくことを意味します。

多くの子供は、投げる力が足りないと体重移動が身についてくると、下半身から生まれた力が骨盤、体幹、肩、肘、そして指先へと、順番にスムーズに伝わっていくようになります。これはよく「運動連鎖」と呼ばれる考え方で、体の各部位がバトンリレーのように力を受け渡していくイメージに近いものです。

このリレーがうまくつながっているピッチャーほど、少ない負担で大きな力をボールに伝えることができるため、見た目の腕の振りはそれほど速く見えなくても、実際の球速はしっかりと出ているというケースが多く見られます。逆に、下半身の体重移動が不十分なまま腕だけで投げようとすると、同じ球速を出すために腕や肘によりいっそう大きな負荷がかかることになり、結果として故障のリスクも高くなってしまいます。

球速アップと故障予防を両立させるために

ピッチングしている男性

これは肘や肩に頼った投球フォームから、全身を使った効率のよい投球フォームへの転換とも言えます。体重移動を軸にしたトレーニングを継続することで、投球フォーム自体が自然と変化し、体の使い方に無駄がなくなっていきます。

結果として、故障のリスクを減らしながらパフォーマンスを伸ばすという、保護者の方が最も望まれている両立が可能になります。

実際、球速の向上や怪我の予防を両立させたいという願いは、多くのご家庭に共通するものですが、その答えは腕の筋力トレーニングだけを増やすことではなく、体重移動という土台の部分を丁寧に育てていくことにあると、当院では考えています。

当院で行っている自己調整法

ストレッチしている男性

当院では、動的ストレッチの中に体重移動を意識づけるための動作を取り入れています。右足から左足へ体重を移動する動作を行った後に、必ず左足から右足へ体重を戻す動作をセットで行うという方法です。

イメージとしては、ボウリングでボールを投げる動作に近いものです。投げる動作を行った後に、大きく「ため」の動作を行う。

この「ため」の動作にはバットやグローブを使う必要は一切ありません。あくまでも体重移動そのものを体に教え込む、体の使い方の教育を目的としたトレーニングです。

実際の事例:小学5年生 野球少年のケース

トレーニングをしている男性

小学5年生の野球少年のケースです。肘の痛みで整形外科や接骨院を受診し、注射や保存療法をすでに行っていましたが、それでも練習後になると痛みが再発してしまうため、根本的な体の使い方に原因があるのではないかと当院にご来院いただきました。

週1回30分のパーソナルトレーニングを2クール実施し、1クール目は動的ストレッチと、スクワットやランジ、サイドランジといった下半身中心の体重移動トレーニングを指導しました。2クール目からはアジリティやプライオメトリクスといった、より専門性の高いトレーニングを取り入れました。

一貫してお伝えしたのは「ため」の動作の重要性です。投球練習ばかりを行っていると投げる動作だけが主導になりがちなため、得意な動作の逆となる不得意な動作を繰り返すトレーニングを指導し、体の連動性を高めることを重視しました。

子供の関節は大人と比べて思った以上にもろく、投げすぎると取り返しのつかない状態になりかねません。だからこそ、体をいかに上手に使いこなすかという視点でのトレーニングが重要になります。

(まとめ)

投球をしている男性

野球肘は「投げすぎ」という一言で片づけられがちですが、実際には投球数以上に、力がどこから生まれてどこへ流れているかという、体全体の使い方が深く関係しています。ここまでお伝えしてきた内容を、あらためて整理します。

この記事で押さえておきたいポイント

  • 野球肘・テニス肘・ゴルフ肘は痛みの場所こそ違うが、いずれも反復動作によるオーバーユースが根本にある
  • 腕や肘は力を伝える最後の通り道にすぎず、負担の大きさを決めているのは下半身の体重移動
  • 駅の改札やベースランニングに見られるように、日常生活も野球というスポーツ自体も左側への荷重に偏りやすい構造になっている
  • 意識的に右側への荷重を鍛えるエクササイズを取り入れることで、肘への負担を減らしながら球速アップも期待できる
  • 痛みが出てから対応するのではなく、体の使い方そのものを早い段階で見直すことが、長く野球を続けるための土台になる
お子さんが大好きな野球を、肘の痛みを我慢しながら続けるのではなく、正しい体の使い方を身につけたうえで、長く楽しく続けてほしい。それはきっと、すべての保護者の方に共通する願いだと思います。

痛みという結果だけを追いかけるのではなく、その痛みがなぜ生まれているのかという体の使い方の根本に目を向けること。当院では20年以上にわたり、そうした視点でジュニアアスリートのお子さんたちと向き合ってきました。もし今、お子さんの肘の痛みや投球フォームに気になる点があれば、一人で抱え込まず、専門家の目で一度体全体の使い方を確認してみることをおすすめします。

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ねもと整体&ストレッチスタジオ院長根本大。
・米国NSCA‐CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
・健康運動指導士

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