投球動作による肩の痛みは、肩関節そのものの弱さよりも、肩甲骨の位置のズレや下半身・体幹からの連動不足によって引き起こされることが多いのが実情です。ドジャースの佐々木朗希投手がインピンジメント症候群で戦線離脱したことでも注目されましたが、トップレベルの選手であっても投球フォーム全体のバランスが崩れれば肩への負担は増大します。
この記事では、インピンジメント症候群が起こる仕組み、内旋と外旋のバランス、下半身から肩への連動性、そして小学生のうちから取り入れたい予防のポイントについて、整体師としての臨床経験をもとに解説します。
佐々木朗希投手の離脱で注目される「投球障害肩」

2025年、メジャーリーグ・ドジャースの佐々木朗希投手が右肩のインピンジメント症候群で登録抹消となり、大きな話題になりました。インピンジメント症候群とは、肩を動かすたびに骨や腱、筋肉などの組織がぶつかり、挟み込まれることで炎症や痛みが生じる状態です。
メジャーリーガーであれば専属トレーナーや高度な指導のもと、レベルの高いトレーニングやリハビリを行っているはずです。それでもなお肩を痛めるということは、投球動作そのものにそれだけ大きな負担がかかっているということでもあります。
プロだけの問題ではなく、一般の選手層においても同じ仕組みで肩を痛めるケースは非常に多く見られます。ここからは、なぜ投球動作で肩に負担がかかるのか、そして負担を減らすためにどう体を使えばよいのかについて、私自身の臨床経験をもとにお伝えしていきます。
インピンジメント症候群はなぜ起こるのか?

インピンジメント(引っかかり、骨や組織のぶつかり)は、肩甲骨の位置がズレていたり、肩関節が適切な位置で機能していないことによって発生します。
炎症が治まった後にまず見直すべきなのは姿勢です。肩甲骨を正しいポジションに戻し、肩が無理なく連動する位置で投げる、動かすということが、再発予防において重要になります。当院に来院される野球選手を見ていても、痛みが出る選手の多くに肩甲骨の位置の乱れや姿勢の崩れが見られます。
投げる動作に必要な「内旋」と「外旋」のバランス

投球動作を考えるとき、肩関節には大きく分けて内旋と外旋という二つの動きがあります。腕相撲のように内側へ曲げていく方向の動作が内旋、逆に腕を後方へ引いていく方向の動作が外旋です。
投球動作では、この内旋の動きが過剰に多くなりがちです。逆に言えば、外旋の動きがスムーズになるほど、内旋の動きも良くなっていきます。リハビリの現場でチューブを使ったエクササイズを見かけることがあると思いますが、あれはまさに外旋の動きを引き出すためのトレーニングです。
当院に来院する野球選手、特にプロの選手を見ていても、この外旋の可動域が一般の方よりもかなり高いことを感じます。肩関節は消耗品です。だからこそできるだけ早い段階でこのことに気づき、小学生のうちから投球動作とは逆方向の動き、つまり外旋運動を積極的に取り入れておくことが、将来的な肩の負担を減らすことにつながると考えています。
下半身・体幹からの連動性を高める

私が普段から意識しているのは、下半身から体幹、そして上半身へとつながる連動性を高めるということです。スクワットやランジといった動作は、トレーニングの基本として必ず行うべきものです。
しかし、これらの基本的なトレーニングは、投球動作のように体全体がつながって連動していく動きとは、性質がまったく逆の動作であるということも理解しておく必要があります。ウエイトトレーニングを中心に行っていると、特にオフシーズンなどは体を連動させる動きが不足し、連動性を生まない体の使い方が学習されてしまう可能性があります。
トレーニングの基本原則のひとつに「特異性の原則」というものがあります。これは、競技に合ったトレーニングを継続することでしか、その競技特有の動作は向上しないという考え方です。
この視点で考えると、野球のように全身を連動させる動作が求められる競技において、ベンチプレスやスクワット、デッドリフトといった種目の比率が高くなりすぎると、複雑な投球動作にうまくリンクしていかない可能性があります。
肩の障害を減らすためにも、基本的な筋力トレーニングと合わせて、体の連動性を高める動きづくりを常に行うべきだと考えています。
柔軟性と固定性のバランス、そして思い込みへの注意

体が柔らかく関節が緩いことは、投球動作において大きな強みになります。ただし緩すぎると、関節が適切な位置をキープできなくなり、インピンジメントのような弊害が起こりやすくなります。
そのため、ただ柔らかいだけでなく、肩甲骨を安定させるための筋力トレーニングやリハビリを行い、適切なポジションで体を支えられる状態に整えていく必要があります。また、長年トレーナーとして選手を見てきて感じるのは、競技選手ほど自分のトレーニングに対する思い込みが強く、過信してしまう傾向があるということです。
これは真面目にトレーニングに取り組む選手ほど注意したい点です。「以前このトレーニングで効果があったから、これを続ければよい」と考えてしまいがちですが、専門的な視点で言うと、同じトレーニングを一定期間続けたあとは内容を変化させていかないと、なかなか向上が見込めません。体を慣れさせないということが、筋力をつけたり動作パターンを増やしたりするうえで、非常に重要になります。
成長とともに硬くなっていく選手たち

小中学生の頃からジュニアのパーソナルトレーニングに通っていた選手が、高校や大学に進学した後、久しぶりに整体に来院して驚くことがあります。以前はしなやかだった体が、いつの間にか一般の方の柔軟性よりも硬くなってしまっているケースが少なくありません。
筋肉量が増え、競技パフォーマンスへの自信もついている一方で、柔軟性で見ると以前より硬くなっている。同じ動作を繰り返し行っていると、少し変化した動きに対応できなくなってしまうのです。これは肩の障害についても同じことが言えます。
だからこそ私は、来院してくれる選手には、いずれ一人になってトレーナーがいなくなっても、自分で考えてトレーニングメニューを組み立てられるよう、基本的な運動知識を子どもの頃から伝えるようにしています。実際に、中学生の頃から通っていた野球少年が高校生になり、頻度は減りながらも定期的に来院してくれていたのですが、前屈やスクワット動作が以前よりかなり硬くなっていることに気づいたことがあります。
筋肉量は増えている一方、コンディショニングとしてのストレッチはほとんど行っていないとのことでした。そこで、すきま時間にストレッチを行うよう指導したところ、次に来院した際にはかなり柔軟性が戻っており、ほっとしたことをよく覚えています。
高校生になると環境が変わり、教えられたことを一人で精一杯こなすようになりますが、学校の部活動ではコンディショニングの指導まで手が回っていないことがほとんどです。その結果、オーバーユースの状態に陥っている選手も少なくありません。下半身からの連動で肩に力を伝えられるようにするストレッチは、こうした状態を整えるうえでとても重要な要素になります。
病院では診てもらえない、肩関節の調整技術

小中学生が肩の痛みを訴えると、多くの場合まず病院を受診します。ただし病院では、肩関節のあらゆる方向の動きまで細かく診てもらえることはほとんどありません。
肩関節には、圧縮と牽引、屈曲と伸展、内旋と外旋など、さまざまな方向への動きがあります。当院ではこれらすべての方向を一つひとつ調整し、最適な動きに整えていく独自の関節調整を行っています。
肩だけでなく、動作に関わる肩甲骨や鎖骨、肋骨と連動した動きを高めることも、肩の障害を整えるうえで欠かせません。当院では、これらを順序立てて調整し、仕上げていく施術方法を行っています。
整形外科・整体院・ねもと整体、肩の痛みへの対応の違い

投球動作による肩の痛みは、骨や軟骨そのものの異常だけでなく、肩甲骨の位置や可動域、内旋と外旋のバランス、投球フォームそのものに原因があることが多く、画像検査だけでは根本的な改善につながりにくいケースが少なくありません。
肩の痛みに対して、整形外科・一般的な整体院・ねもと整体では、投球動作に関わる評価やケアの守備範囲にそれぞれ違いがあります。どこで何を診てもらえるのかを整理すると、選手や保護者の方が次にとるべき行動が見えやすくなります。以下の比較表で、それぞれの対応範囲をまとめました。
| 比較項目 | 整形外科 | 一般的な整体院 | ねもと整体 |
|---|---|---|---|
| 骨・軟骨の画像検査 | ◎ | × | × |
| 肩甲骨の位置・可動域の評価 | △ | ○ | ◎ |
| 内旋・外旋のバランス評価 | △ | △ | ◎ |
| 投球フォームの動作分析 | △ | ○ | ◎ |
| 競技を続けながらのケア方針 | ○ | ○ | ◎ |
| 外旋トレーニング等のセルフケア指導 | △ | ○ | ◎ |
| パーソナルトレーニングとの連携 | △ | △ | ◎ |
よくある質問
Q1. 子どもが「肩が痛い」と言ったら、病院と整体どちらに行くべきですか?

A1.急な強い痛みや腫れ、骨折・成長軟骨の損傷が疑われる場合は、まず病院での画像診断が必要です。ただし痛みが落ち着いたあとの肩甲骨や肩関節の可動域調整、連動性の改善は病院では対応されないことが多く、そこを整体で補っていくのがおすすめの流れです。
Q2. 外旋のトレーニングは自宅でもできますか?

A2.チューブを使った外旋エクササイズは、自宅でも取り入れやすい方法です。ただし肩関節の位置や肩甲骨の安定性が整っていない状態で行うと効果が出にくいため、まずは専門家に土台となる姿勢や可動域をチェックしてもらうことをおすすめします。
Q3. スクワットやベンチプレスなどの基本トレーニングは野球選手に不要ですか?

A3.不要ではありません。基本的な筋力トレーニングは土台として必要です。ただし、それだけでは投球動作特有の連動性は養われないため、基本トレーニングと、体をしなやかに連動させる動きづくりの両方をバランスよく行うことが重要です。
まとめ

投球動作による肩の痛みは、肩関節そのものだけの問題ではなく、肩甲骨の位置、内旋と外旋のバランス、下半身から体幹への連動性など、体全体の使い方が影響しています。
この記事のポイント
- 肩の痛みは肩甲骨の位置ズレや姿勢の崩れが引き金になりやすい
- 投球動作は内旋に偏りやすく、外旋トレーニングでバランスを整えることが重要
- 下半身・体幹から肩への連動性を高める動きづくりが障害予防につながる
トップレベルの選手であっても投球フォームのバランスが崩れれば肩を痛めることから分かるように、これは特別な選手だけの問題ではありません。小学生のうちから外旋運動や体の連動性を意識したトレーニングを取り入れ、成長とともに硬くなりやすい体を定期的に整えていくことが、投球フォームによる肩の痛みの予防につながります。
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有限会社ディーエスシーエス 代表取締役根本大

ねもと整体&ストレッチスタジオ院長根本大。
・米国NSCA‐CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
・健康運動指導士
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