サッカーなど蹴る動作を繰り返すスポーツで股関節や鼠径部に痛みが出る場合、多くはグローインペイン症候群(鼠径部痛症候群)と呼ばれる状態で、キック動作そのものよりも切り返しやジャンプの着地といった負荷の積み重ねが原因です。
股関節は、自分自身で予防することができる関節です。
今回は、当院で行っているセルフチェックとセルフケア、海外の研究報告、施術事例を交えてお伝えします。
蹴る動作で股関節が痛くなるのはなぜか?

股関節や鼠径部の痛みは、股関節や鼠径部が痛むスポーツをしている方に多く見られる症状です。当院でも長年、股関節の痛みを訴えて来院される子どもやスポーツ選手を数多く診てきました。
原因がひとつに特定しにくい症状のため、様々な角度から股関節の痛みと向き合ってきました。痛みが出る場所や強さも人によって異なり、鼠径部の奥がズキズキする方もいれば、蹴った瞬間だけ鋭い痛みが走る方、練習後にじわじわと違和感が残る方など、症状の出方はさまざまです。
特にサッカーは発症しやすい競技ですが、単純にボールを蹴る動作だけが原因ではありません。瞬間的な切り替え動作やストップ動作、ジャンプからの着地など、様々なエキセントリックな刺激(筋肉が伸ばされながら力を発揮する動き)に対して症状が出やすいのが特徴です。
蹴る瞬間には内転筋や腸腰筋、恥骨結合まわりの筋肉に強い負荷がかかり、これが繰り返されることで鼠径部から股関節にかけて痛みや違和感が出てきます。最近ではゴルフやテニスでも股関節の重要性が言われるようになっており、どの競技であっても痛みが出る前に予防しておくことが最も大切です。
海外の研究から分かっていること

海外のスポーツ医学の研究でも、この分野は数多く調べられています。ある系統的レビューでは、股関節全体の回旋可動域が一定より狭い選手ほど、その後グローインペイン症候群を発症しやすいという結果が報告されています。
また、プロサッカー選手を対象にした研究でも、股関節や鼠径部に症状がある選手は、症状のない選手に比べて股関節の可動域が狭い傾向にあることが分かっています。専門的な数値の細かい部分は選手や研究によって差がありますが、要点をまとめると「股関節が硬い状態のまま競技を続けると、鼠径部の痛みにつながりやすい」ということです。
こうした報告からも、日頃から股関節の可動域を保っておくことが予防の鍵になると考えられます。海外では選手のシーズン前チェックとして股関節の可動域を測定するチームもあり、痛みが出る前の予防検査という考え方が広がりつつあります。
股関節の可動域をセルフチェックする方法

股関節は幸い、ご自分で予防することができる関節です。まず、足を組む動作は股関節を内転させる動作にあたります。膝に手を当てて、ご自分で膝を内側に引いてみてください。多くの方が「詰まる感じ」や引っかかりを感じるはずです。このように股関節には引っかかりが出やすいポイントがあり、悪化する前にそれを知っておくことで、可動域の低い股関節を早めにケアすることができます。
逆に足を開く動き(外転)も同様にセットで考える必要があります。内側に動かしづらい場合は、逆に一度外側に大きく開いてから内側に動きをつけるというテクニックもあります。さらに股関節を捻る内旋・外旋の動きも重要です。理想はすべての方向に動かすことですが、まずはご自身が動かしやすい方向から少しずつ整えていくのがベターです。
また、股関節の動きを検査すると左右差があることがほとんどです。よく「足を組むと骨盤が歪む」と言われますが、実際には足を組んだだけで骨盤がズレることはありません。その代わり、左右に足を組んでみると、片方は組みやすく、もう片方は組みづらいと感じるはずです。大切なのは、股関節は硬くなるものだと認識し、痛みが出る前から左右均等に内転・外転のストレッチを習慣にしておくことです。
内転筋トレーニングと自分でできるセルフケア

海外の研究では、内転筋の力を鍛える運動(コペンハーゲンアダクションエクササイズと呼ばれる種目)を継続して行ったグループで、グローインペイン症候群の発症が少なかったという報告もあります。特別な器具がなくても、パートナーやベンチを使って内ももに負荷をかける運動として応用できるため、可動域を整えるストレッチとあわせて取り入れると、より効果的な予防につながります。可動域を広げるストレッチと、内転筋そのものの力を鍛えるトレーニングは、どちらか一方ではなく両方をセットで行うことが理想的です。
自分でできるセルフケアとしては、次のようなものがあります。膝を内側に引くストレッチでは、膝に手を当て、痛みのない範囲でゆっくり内側に引き、詰まりを感じる角度の手前で数秒キープします。股関節を開く外転ストレッチでは、横向きに寝て脚をゆっくり持ち上げ、股関節周りの筋肉を使いながら開きます。
内旋・外旋の回旋ストレッチでは、椅子に座り膝を90度に曲げた状態で、すねを内側・外側にゆっくり動かします。左右差を整えるチェックでは、左右で足の組みやすさを比べ、組みづらい側を重点的にケアします。これらを毎日続けることが難しい場合は、練習前のウォームアップと就寝前の2回だけでも取り入れると、無理なく習慣化しやすくなります。いずれも痛みを我慢して伸ばすのではなく、詰まりや引っかかりを感じる手前で止めることがポイントです。
成長期の子どもの場合は、骨や軟骨がまだ発達段階にあるため、大人以上に股関節周囲の柔軟性が保たれにくい傾向があります。練習量が増える時期や、身長が急に伸びる時期は骨の成長に筋肉の柔軟性が追いつかず、股関節まわりが硬くなりやすいため、特にセルフケアを意識的に取り入れることをおすすめします。
専門家に相談すべきケース

セルフケアを続けても股関節や鼠径部の痛みが引かない場合、体が硬くなりすぎていて自分の力だけでは可動域を戻しづらい状態になっていることがあります。
特に、片側の股関節だけ明らかに動きが悪い、蹴る動作のたびに毎回痛みが出る、湿布や安静だけでは改善しないといった場合は、股関節周囲の筋肉や関節の状態を専門的に確認してもらうことをおすすめします。
【施術事例】中学生サッカー選手の股関節痛

中学3年生のサッカー選手の事例です。サッカーをした後に股関節あたりに痛みが出るようになり、痛みが続いたため来院されました。仰向けで施術を行うと、右の股関節の動きが悪く、痛みや違和感もありました。すでに整形外科や整骨院に通院し、湿布などで痛みを抑えていましたが、3年生最後の大会で花道を飾りたいという思いから、何とか改善したいと週1回のペースで通院されました。
最初の2〜3回は体が硬く、なかなか症状の改善が難しい状態でしたが、自宅でも毎日10分程度、就寝前に当院で行っているストレッチを続けていただくようお伝えしました。その成果もあり、5回目の施術で痛みが大きく減少し、7回目にはほぼ痛みがなくなりました。
毎日のセルフケアの積み重ねの大切さを改めて実感した事例です。現在は高校生になり強豪校で活躍しており、週1回30分程度のパーソナルトレーニングに通いながら、体の癖を改善するベーストレーニングを続けています。この事例からも分かるように、施術と自宅でのセルフケアを両立させることが、早期改善への近道になります。痛みが出てから慌てて対応するよりも、普段の練習の中に股関節のセルフチェックを組み込んでおくことが、長くスポーツを続けるための土台になります。
よくある質問
Q1:子どもが股関節の痛みを訴えていますが、様子を見てもいいですか?

A.蹴る動作のたびに痛みが出る、片側だけ明らかに動きが悪いといった場合は、悪化してからでは可動域を戻すのに時間がかかります。早めにセルフチェックを行い、必要であれば専門家に相談することをおすすめします。
Q2.ストレッチをしても股関節の詰まりが取れません?

A.体が硬くなっている期間が長いほど、変化には時間がかかります。事例でも改善までに数回の施術と毎日のセルフケアが必要でした。焦らず、痛みのない範囲で継続することが大切です。
Q.片方の股関節だけ硬いのは異常ですか?

A.左右差があること自体は珍しくありません。股関節は硬くなるものだと捉え、硬い側を重点的にケアしていくという考え方で問題ありません。
整体単体・パーソナル単体との比較

股関節や鼠径部の痛みを本気で改善したい場合、整体院での手技によるケアと、パーソナルジムでの筋力トレーニングのどちらか一方だけでは、実は不十分なケースが少なくありません。
整体院は可動域の改善や関節の調整には強い一方、痛みに負けない筋力づくりは専門外になりがちです。逆にパーソナルジムは筋力強化には長けていても、股関節の詰まりや左右差そのものを手技で整えることは難しいのが実情です。
ねもと整体では、この両方を一人の担当者が併せて行うことで、蹴る動作の中で再発しにくい股関節をつくることを目指しています。それぞれのアプローチの違いを、以下の比較表にまとめました。
| アプローチ / 目的 | 主な目的と特徴 | 整体院単体 | パーソナルジム単体 | ねもと整体(併用) |
|---|---|---|---|---|
| 股関節の可動域改善(詰まりの解消) | 内転筋や関節包まわりの硬さを手技で緩め、引っかかりを取り除く | ◎ | △ | ◎ |
| 内転筋・体幹の筋力強化 | エキセントリックな負荷に耐えられる筋力そのものを鍛える | △ | ◎ | ◎ |
| 左右差・骨盤アライメントの調整 | 股関節の左右差を評価し、手技で可動域を揃えていく | ◎ | ○ | ◎ |
| 蹴る動作に近い実戦的トレーニング | キックやストップ、着地の動きの中で再発しない体を作る | △ | ○ | ◎ |
| 大会前の痛み対応と仕上げ | 痛みの緩和とコンディション調整を一人の担当者が一貫して管理 | ○ | ○ | ◎ |
まとめ

蹴る動作で股関節や鼠径部に痛みが出るグローインペイン症候群は、キック動作そのものよりも、切り返しやジャンプの着地といった瞬間的な負荷の積み重ねが原因になりやすい症状です。海外の研究でも、股関節の回旋可動域の狭さや内転筋の弱さが発症に関わることが報告されており、日頃のセルフチェックとケアの重要性が裏づけられています。痛みが出てから対処するのではなく、普段の練習の中にセルフチェックを組み込んでおくことが、長くスポーツを続けるための土台になります。
今回のポイント
- 股関節の痛みはキック動作だけでなく、切り返しやジャンプの着地などエキセントリックな刺激の積み重ねで起こりやすい
- 膝を内側に引くセルフチェックで詰まりを確認し、内転・外転・回旋のストレッチを左右均等に習慣づけることが予防の基本
- 海外の研究でも可動域の狭さと内転筋の弱さが発症に関わるとされており、ストレッチと筋力トレーニングの両方が大切
- セルフケアを続けても改善しない場合、片側だけ動きが悪い場合は、我慢せず専門家に相談することが早期改善につながる
股関節は、痛みが出る前から予防できる数少ない関節です。今日ご紹介したセルフチェックとストレッチを、まずはできる範囲から日々のコンディショニングに取り入れてみてください。毎日の小さな積み重ねが、蹴る動作での股関節の痛みを防ぎ、長くスポーツを楽しむ体づくりにつながります。
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・米国NSCA‐CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)
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