最終更新日2026年10月27日
ねもと整体&ストレッチスタジオ根本院長。
整体技術と運動指導の両面からサポート!
「投げると肩に違和感がある」「インナーマッスルを鍛えた方がいいと言われたけれど、何をすればいいのかわからない」。野球をしているお子さんや保護者の方から、このようなご相談をいただくことがあります。
肩のインナーマッスルは、腕を大きく動かすときに関節がぶれないよう支える、深いところにある小さな筋肉です。投げる動作では、ボールを強く投げる「内旋」の動きに意識が向きがちですが、腕を後ろに引いてためをつくる「外旋」の動きや、投げ終わりに腕を減速させる働きも欠かせません。軽い負荷の外旋運動を取り入れることは、肩を支える働きを見直すきっかけになります。
この記事では、整体師・パーソナルトレーナーとして20年以上現場に立つ私が、肩のインナーマッスルの役割と投球との関係、チューブを使った外旋運動のやり方を、登戸在住の野球部の中学1年生の事例を交えてお伝えします。
強く投げる力と、
肩を支える力をセットで。
肩のインナーマッスルとは?関節を支える4つの筋肉

インナーマッスルという言葉は、体幹や股関節など、体のさまざまな部位の深いところにある筋肉に使われます。今回は、そのなかでも肩の「ローテーターカフ(回旋筋腱板)」についてお伝えします。
ローテーターカフは、棘上筋(きょくじょうきん)・棘下筋(きょくかきん)・小円筋(しょうえんきん)・肩甲下筋(けんこうかきん)という4つの筋肉と、その腱からなる組織です。どれも肩甲骨から始まり、腕の骨(上腕骨)の頭の部分を包み込むようについています。
肩の関節は、ゴルフボールが小さなティーの上に乗っているような形をしています。受け皿が浅いぶん腕を大きく動かせる反面、関節そのものは不安定になりやすいつくりです。そこでローテーターカフが、腕を動かすたびに骨の頭を受け皿に引き寄せ、関節がずれないように支えています。
4つの筋肉には、それぞれ主に関わる動きがあります。棘上筋は腕を横に上げはじめる動き、棘下筋と小円筋は腕を外側へひねる「外旋」、肩甲下筋は腕を内側へひねる「内旋」です。今回のテーマである外旋運動は、主に棘下筋と小円筋を使う運動です。
大きく動かす筋肉と、関節を支える筋肉の違い

肩のまわりには、三角筋や大胸筋、広背筋のように、体の表面にある大きな筋肉もあります。これらはアウターマッスルと呼ばれ、腕を力強く動かしたり、ボールに勢いをつけたりするときに大きな力を出します。
一方のインナーマッスルは、大きな力を出すことよりも、関節の位置を整えて動きを安定させることが主な役割です。車にたとえると、アウターマッスルがエンジン、インナーマッスルがハンドルやタイヤのような存在です。どちらか一方だけが強くても、スムーズには走れません。
スポーツの動作では、この2つが協調して働くことが大切です。大きな筋肉の力に対して関節を支える働きが追いつかないと、骨の頭が受け皿の中で安定しにくくなり、肩のまわりの組織に負担がかかりやすくなると考えられています。
なお、ローテーターカフの腱に損傷や断裂が生じることもあります。ただし、肩のジャリジャリした音や違和感だけで、腱が切れているとは判断できません。また、腱板損傷と五十肩は異なる状態であり、症状だけで自己判断しないことが大切です。
投げる動作では、内旋と外旋の両方を使います

肩の内旋は上腕を内側へひねる動き、外旋は外側へひねる動きです。投球では、腕を後ろへ引いてためをつくる局面で外旋が大きくなり、ボールを加速させる局面で急速な内旋が起こります。投げ終わりには、前へ振り出された腕にブレーキをかけて減速させる筋肉の働きも必要です。
外旋加速
内旋減速
フォロースルー
スポーツでは、ボールを強く投げる動きに意識が向きやすいものです。けれども、投げ終わりに腕を減速させる局面では、肩の後ろ側にある筋肉が、腕を引き止めるように働きます。私が運動指導で大切にしているのは、投げる力だけでなく、外旋する筋肉の働きや肩を支える働きにも目を向けることです。
また、投球は肩の回旋だけで行う動作ではありません。足で地面を踏み込み、股関節・体幹・肩甲骨へと力をつないでいき、最後に腕が振られます。下半身や体幹がうまく使えないと、そのぶん肩や肘で力を補おうとして、負担が増えることもあります。
外旋する筋肉の弱さと、投球のケガの関係

海外では、プロ野球の投手を対象に、シーズン前の肩の筋力とその後のケガとの関係を調べた研究があります。5年間にわたって春のキャンプで肩の筋力を測ったところ、腕を外側へひねる力(外旋筋力)や棘上筋の力が弱い投手ほど、シーズン中に手術が必要になる投球のケガが多い傾向がみられました。内旋の力に対する外旋の力の割合と、肩のケガとの関連も報告されています。
この研究はプロの投手を対象にしたもので、そのまま中学生に当てはめることはできません。ただ、投げる力を生む内旋だけでなく、外旋する筋肉の働きにも目を向けることの大切さを示す結果のひとつといえます。
一方で、「内旋ばかりするから痛くなる」「4つの筋肉が弱いことだけが原因」と一つに決めつけることはできません。投球数、休養、肩や股関節の可動域、筋力、フォームなど、複数の要素を確認する必要があります。外旋の角度を無理に大きくしようとすることも、かえって肩の負担になる場合があります。
成長期の投球は、投げる数にも気をつけたい

成長期の子供の肩は、大人の肩とは違います。骨の端には骨が伸びるための「成長軟骨(骨端線)」があり、大人に比べて、繰り返しの負担の影響を受けやすい部分です。投げすぎによって、この部分に痛みが出ることもあります。
アメリカで9〜14歳の投手476人を1シーズン追跡した研究では、半数の子がシーズン中に肘や肩の痛みを経験しました。1試合や1シーズンで投げる球数が多いほど肘や肩の痛みが出やすく、カーブを投げることと肩の痛みとの関連も報告されています。
インナーマッスルの運動は大切ですが、それだけで投げすぎの負担を打ち消せるわけではありません。練習や試合での球数、連投の有無、休養日、ほかのポジションでの送球も含めて、肩がどれだけ使われているかを見直すことが、まず大切です。
登戸在住・野球部の中学1年生の事例

登戸にお住まいの、野球部に所属する中学1年生の男の子が来院されました。投げるときに肩の違和感が出るようになり、「インナーマッスルが原因なのかな」と考えて、当院に相談にいらっしゃいました。
肩の動きを確認すると、投球に関わる内旋・外旋の動作で、痛みや違和感の訴えがありました。なお、この場で腱板の断裂などを診断したわけではありません。
そこで私がお伝えしたのは、外旋を意識した軽い運動を、練習前のウォーミングアップに取り入れることでした。チューブや軽いダンベルを用い、肩の状態に合わせて負荷と動かす範囲を調整しました。重い負荷で追い込むのではなく、肩の動きと筋肉の働きを確かめることを意識していただきました。
その後、徐々に肩の痛みが改善し、競技に復帰されました。これは当院で経験した一例であり、外旋運動だけで改善したと断定したり、同じ運動で誰でも同じ結果が得られるとお伝えしたりするものではありません。
外旋運動のやり方|チューブを使った基本の動き

チューブを使う外旋運動の一例をご紹介します。
①チューブを、おへそくらいの高さで外れない安定した場所に固定し、体の横に立ちます。
②固定した場所から遠いほうの手でチューブを持ち、肘を90度に曲げて体の横につけます。脇に丸めたタオルをはさむと、肘の位置が安定しやすくなります。
③上腕を体につけたまま、前腕をゆっくり外側へ開きます。
④同じくらいの時間をかけて、ゆっくり元の位置に戻します。
体ごとひねったり、肩をすくめたりしないことがポイントです。痛みのない範囲で行い、チューブに強い張力をかけすぎないようにします。
海外では、7種類の肩の外旋運動について、筋肉の活動を細い電極で測った研究があります。横向きに寝て行う外旋運動で、棘下筋と小円筋が最も大きく働いていました。同じ「外旋運動」でも、姿勢によって働く筋肉の割合が変わることがわかります。
ダンベルを使う場合は、姿勢によって負荷のかかる方向が変わります。チューブと同じつもりで自己流に行わず、やり方を確認してから取り入れましょう。また、外旋運動は負荷を使った筋力・動作コントロールの練習であり、反動をつけて大きく伸ばすストレッチとは異なります。
練習前のウォーミングアップに取り入れるコツ

外旋運動をウォーミングアップに取り入れる場合は、肩を温めて、筋肉の働きを目覚めさせることが目的です。投球前に肩を疲れさせるほどの回数や重さは避け、軽い負荷で丁寧に行いましょう。
日本の9〜11歳の野球チームを対象にした研究では、ストレッチやバランスの運動をウォーミングアップに取り入れたチームで、肩と肘のケガが少なかったと報告されています。この研究の運動は外旋運動とは異なりますが、練習前の準備を習慣にすることの大切さを示しています。
運動中や運動後に痛みや違和感が出たときは、我慢して続けないでください。特に成長期の投球時の肩の痛みには、骨の成長する部分への負担が関係することもあります。繰り返す痛み、投げる力の低下、腕の上げにくさがあるときは投球を中止し、整形外科で原因を確認したうえで、運動の開始や競技復帰を判断することが大切です。
インナーマッスルと外旋運動についてよくある質問
Q.インナーマッスルの運動は、毎日行ったほうがいいですか?

A.軽い負荷で動きを確かめる程度の運動であれば、ウォーミングアップとして練習のたびに行うこともできます。ただし、筋肉に疲れが残っているときや、肩に痛みがあるときは休みましょう。回数や頻度は、肩の状態や練習量に合わせて調整することが大切です。
Q.チューブとダンベルは、どちらがよいですか?

A.チューブは張力の強さを選びやすく、立ったままでも行いやすい道具です。ダンベルは姿勢によって負荷の方向が変わるため、横向きに寝るなど、やり方を確認してから使いましょう。どちらも、重い負荷よりも正しい動きを優先してください。
Q.肩が痛いときも、外旋運動をしてよいですか?

A.痛みがあるときは、運動を始める前に原因を確認することが大切です。成長期の肩の痛みには、骨の成長する部分の問題が隠れていることもあります。痛みが続く場合は投球を中止し、整形外科を受診してください。
まとめ

肩のインナーマッスル(ローテーターカフ)は、腕を大きく動かすときに関節を支える4つの筋肉です。投げる動作では内旋だけでなく、外旋や腕を減速させる働きも欠かせません。
- ・肩のインナーマッスルは、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つ
- ・投球では、ためで外旋、加速で内旋、投げ終わりに減速の働きが必要
- ・外旋する筋肉の働きにも目を向け、投げる力とのバランスを見直す
- ・成長期は、球数や休養など投げる量の管理も大切
- ・外旋運動は、肘を体の横につけて軽い負荷でゆっくり行う
- ・痛みが続くときは投球を中止し、整形外科で原因を確認する
まずは軽いチューブでの外旋運動を、練習前の習慣にしてみてください。
痛みや違和感が続く場合は、自己判断せずに専門家へご相談ください。
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